VR技術発展にともなうVTuberビジネスの展開例
目次
VR元年といわれた2016年からVRビジネスは成長を続けています。そのなかにあって、最も勢いのあるもののひとつとして、YouTuberが自分の代わりに3Dのバーチャルモデルを使って動画を投稿するというVTuber(Virtual YouTuber)があります。今回はVTuberによって広がりを見せている新しいビジネスをご紹介します。
企業の公式VTuberとして自社広報を担当
不二家の「ペコちゃん」や、NHKの「どーもくん」など、企業が公式キャラクターを作り、広報に役立てる例は以前からあります。そのVTuberバージョンが見られるようになってきました。山佐スロワールドおよびスロプラス+の公式キャラクター「虹河ラキ」や、コンパイルハートの「いるはーと」などです。
まだ事例は少ないものの、若年層への訴求力強化、ファン獲得、グッズ展開、イベントなど広報ツールとして活躍中です。
リアルイベントやテレビ番組MCなどタレント活動
YouTube以外にも活動を広げているVTuberも出現しています。「響木アオ」は世田谷区のTSUTAYAで2018年4月にモニター映像によるソロライブイベントを行い、成功させています。観客との掛け合いをすることでYouTube上ではできないコミュニケーションを実現させていました。
また、トップVTuberの「キズナアイ」や、「電脳少女シロ」はTV番組に出演しており、アイドルやタレントと同様の活動を始めています。
スマートフォンアプリにもVTuber市場は展開している
本格的なVTuberの撮影には、スペックの高いパソコンやモーショントラッキングシステム、VR機器といった機材が必要です。また、それらを操る技術も不可欠です。しかし、そうした敷居を下げ、手軽にVTuberになれるアプリが登場しています。
VRコンテンツも制作しているViRDからは「パペ文字」、VTuber「ときのそら」を運営しているカバーからは「ホロライブ」が提供されています。どちらもスマートフォンのインカメラを使い3Dモデルへリアルタイムに表情や動きを反映できるというアプリです。
また、いちからはバーチャルライブアプリ「にじさんじ」を開発し、公式バーチャルライバーを募集しました。現在は8名の公式バーチャルアイドルを抱えています(「にじさんじ」は2018年5月12日時点では非公開)。いちからも、「パペ文字」や「ホロライブ」と同じように、誰でもVTuberになれるアプリを近日中に公開する予定です。
VTuber市場に対して上場企業も動きを見せる
ベンチャー企業だけでなく、大企業もVTuberにビジネスチャンスを見出すようになっています。
グリーはVTuber事業として40億円規模の投資ファンドを立ち上げました。ファンドの第一弾としてアメリカスタートアップのオムニプレゼンスに出資しています。また、VTuber事業の子会社、Wright Flyer Live Entertainmentを設立し、多角的な事業を展開しようとしています。
ディー・エヌ・エーは、「SHOWROOM」という仮想ライブ空間サービスを子会社が運営しています。「タレント・モデル」、「お笑い・トーク」といったカテゴリのなかに「バーチャル」という項目があり、「東雲めぐ」などのVTuberが配信しています。守安社長は同サービスとVTuberの親和性を強調し、VTuber需要の取り込みを行いソーシャルライブサービスにも注力していくとしています。
サイバーエージェント傘下のCyberZは、VTuber事業に特化したマネジメント会社「CyberV」を設立しました。所属するVTuber(同社ではバーチャルストリーマーと呼称)の活動を支援し、配信技術の向上にも取り組むとしています。
KADOKAWAではキズナアイの写真集などのグッズを販売しています。また、コロプラの馬場社長もVTuberに興味を示しています。決算説明会の質疑応答ではVTuber事業を「会社として発表できる段階ではない」としつつも「ぜひやりたいと思っている」と回答しています。
今後さらなる広がりが期待されるVTuberビジネス
現在のVTuber市場の展開は以下のようになっています。
- 広報活動やゲームの広告
- タレント活動(イベントやテレビ出演など)
- スマートフォンアプリによる新たなVTuber発掘
- マネジメント事業
- 各種グッズの制作・販売
VTuberはタレントのようなスキャンダルのリスクが低く、企業のマネジメントが容易です。また、昨今の企業公式Twitterのように、キャラクターが消費者に受け入れられれば、動画という訴求力を活かしたマーケティングが可能です。