VTuberを起用したオウンドメディアが興隆の兆し
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最近、VTuberをオウンドメディアに起用する動きが出てきました。
日本経済新聞社が発表した2018年上期ヒット商品番付にも「バーチャルユーチューバー」が選出されており、にわかに注目を集めるVTuber。
今回は、現在VTuberをオウンドメディアで活用している企業をご紹介します。
オウンドメディアの発展とVTuber
企業が自社で運営するオウンドメディアはSNSの発展とともに拡大してきました。メルマガやブログ、Facebook、Twitterと発信先も多岐にわたっています。そのなかで昨今存在感を増してきているのがYouTubeを利用したオウンドメディアです。
YouTube上でオウンドメディアを展開することで、ファンの増加、ブランディングの強化など効果的なマーケティングが可能です。オウンドメディアとしてのYouTubeの可能性については、かむなびの以下の記事をご参照ください。
『これからのYouTube企業活用は、広告ではなくオウンドメディア。今最も成功している企業に、VSEO戦略の秘訣を学ぶ』
さて、最近のYouTubeで話題になっているのがVTuberです。3Dモデルを利用したYouTuberで、YouTube以外にもテレビに出演したり、ライブを行ったりと存在感が増してきています。このVTuberをオウンドメディアとしてマーケティングに活用している例が増えてきました。
ゲーム会社のVTuber いるはーと
「いるはーと」はゲーム会社であるコンパイルハートのVTuberとして2018年の4月から活動を開始しました。投稿された動画では企業のPRをほとんど行っていません。また、「株式会社コンパイルハートの非公式バーチャルYouTuber」と称しています。
しかしコンパイルハートのHPにはしっかりいるはーとのリンクがあり、企業色を抑えつつファンを獲得していく戦略を取っているようです。
パチスロ会社のVTuber 虹河らき
「虹河らき」は、アミューズメント系の企業、山佐のPRキャラクターとして誕生しました。自社コンテンツである山佐スロワールド・スロプラスの宣伝のため2018年2月からVTuberとして活動しています。
動画はゲームの実況や「やってみた」系が多いですが、山佐のスロットを紹介するものもあります。虹河らきは動画内で時折「運営」から挑発を受けており、ゆるい対立構造を作ることで企業色を抑えているようです。
気象情報会社のVTuber Airi
「WEATHEROID Type A Airi(ウェザーロイド・タイプ エー・アイリ)」は気象情報を提供しているウェザーニューズの公式キャラクターです。WEATHEROIDは元々天気読み上げソフトだったのですが、イラストが付けられ2012年に本格デビューしました。
2013年には3Dモデルが登場していることから、VTuberの走りとも言えます。2018年5月17日からYouTubeでも放送を開始しました。動画は毎日の天気予報ライブが中心です。ニコニコ動画やLINE LIVEなどでも同じ内容を放送しており、企業のPRというよりコンテンツのひとつという位置づけです。
ちなみに「ポン子」という名称は「ポンコツ」が元になっているファンが付けたあだ名です。YouTubeチャンネル名に書いてあることから半公式化した名称と言え、ファン交流の深さが伺えます。
終了したアプリのVTuber フェルミ
「フェルミ」はソニー・ミュージックエンタテインメントが提供していたゲームアプリ「真空管ドールズ」のキャラクターの1人です。アプリ自体は2018年1月にサービスが終了しています。しかし同年4月から元々あったYouTubeの公式チャンネルにフェルミがYouTuberとして復活し、動画投稿をはじめました。
動画内容は多くのVTuberと同様、ゲームやチャレンジ系です。5月からは「ブロッサム」が加わり、2人で進行することもあります。終わってしまったコンテンツの再利用に成功しています。
製薬会社のVTuber 根羽清ココロ
「根羽清(ねばせい)ココロ」はロート製薬のVTuberで、2018年6月10日から活動を開始しました。公式HPに「ロートの魅力をもっとみんなに知ってほしい」と書いてあり、主な目的はブランディングと考えられます。
動画は2本しか投稿されていませんが、チャンネル登録者数は約1万人にもなっています(2018年6月15日現在)。弟の存在も示唆されており、今後どのように展開されていくか注目が集まっています。
VTuberをオウンドメディアで使うメリット
VTuberをオウンドメディアで起用するメリットは、ユーザーが企業ではなくVTuberとコミュニケーションしているととらえてくれることです。実際、今回ご紹介したVTuberのなかには企業を「運営」などと呼び、ディスり愛・けなし愛をして“ユーザー側”なもの言いをするキャラもいます。
このようなVTuberの立ち位置は、企業よりもユーザー側にあると見ることができます。あえて自社の弱点など都合の悪い部分を発信することをオネストマーケティングと言い、企業の信用を高める有力な手法として注目されています。VTuberの“自由さ”は一種のオネストマーケティングに通じるものでしょう。
今後VTuberの起用拡大が予想される
今回ご紹介したVTuberを利用したオウンドメディアをまとめると以下になります。
- PRを控えめにして、運営をいじることでユーザー視点を演出できる
- 既存キャラの活躍の場を拡大できる
- 終了したコンテンツの再利用の可能性
- 純粋な企業広報や情報提供
いずれにせよ、VTuberの立ち位置をはっきりと決めて発信させることが成功のポイントとなるでしょう。企業によるVTuber利用の先発はエンタメ系でしたが、ロート製薬の参入によって多様な業種の参入が進みそうです。