“文学YouTuber” ベルりんの壁 ベルさんの素顔に迫る【YouTuberインタビュー】
目次
―― 文学YouTuber。そんなジャンルがあるのをご存知だろうか。
今や小中学生の「なりたい職業」でも上位にランクインし、多彩な領域で活躍し始めているYouTuber。ただその中でも異彩を放つ「文学YouTuber」として活躍する、ベルりんの壁のベルさん。彼女が現在の活動に至るまでには、意外なストーリーがあった。
そんな彼女が、現在の活動とそこに至る道のり、そして今後の展望について語る。
企画・制作/EVIRY, INC.
文学YouTuberが生まれたきっかけは、ある一本の動画だった
―― 先日、チャンネル開設3周年を迎えましたよね。おめでとうございます。
おかげさまで3周年を迎えることができました。ありがとうございます!
―― では最初に、簡単に自己紹介をしていただいてもよろしいですか?
ベルりんの壁というチャンネル名で、文学YouTuberとしてYouTubeに動画を投稿しております。内容としては、書評やおすすめ本紹介、あるいは美術関連で美術館レビューや絵の解説、あとは音楽関連でフルートとピアノを演奏するという、文化系の3つの軸で、みんなの心が豊かになるような動画を配信していければと思って、今は活動しています。
―― あまりベルさんのことを知らない方だと、「なんでこの名前なんだろう」というのが気になる方も多いと思うのですが、名前の由来は何ですか?
それめちゃくちゃ聞かれます(笑)元々、YouTuberとして頑張るぞと思って始めてはなかったんですよね。まずはチャンネルを開設するっていうときに、ほんとふざけちゃったっていう(笑)
ベルっていう名前は使いたかったんですね。これは、「美女と野獣」のベルが私の中で憧れだったからなんです。でもそれだと特徴がないなと思って、それで「◯◯りん」みたいなのがちょっと可愛いかなって思ったら、ベルりんになっちゃって。そしたら「の壁」付けるしかないかなっていう悪ノリの結果(笑)
―― そうだったんですね。あと、もうひとつ気になるところなんですが、なぜ文学YouTuberというジャンルで活動しようと思ったんですか?
元々は、特にジャンルを絞っていたわけではないんです。最初はもう本当にオールジャンルという感じで、そのときあったことをやったり、流行りのネタみたいなのがあったらそれを真似してみたり、かなりとっちらかったチャンネルになってました。
―― そもそもYouTubeに投稿し始めたのはなぜだったんですか?
もうほんとにそれはたぶん気まぐれというか。その頃ちょうどYouTuberっていう名前が浸透してきた頃でした。たまたまそういう人たちの動画を見たことをきっかけにアカウントを作って、どうせ誰も見ないだろうと思って、歌だけ歌ってるような動画を上げたりし始めたんです。
―― そこから今のスタイルに変わるきっかけはどんなことだったんですか?
旬のネタのような動画で何十万再生っていったものもあるんですよね。“斎藤さんゲーム”をやった動画とか。でもそのときに、そこまで嬉しくなかったんですね。見てくれるのはもちろん嬉しいんですけど、充実度みたいなのはそこまでなかったんですよね。
―― そうだったんですね。
でも、「読書感想文おすすめ本7選」っていう動画を出したときがあって、再生数としては1万くらいだったんですが、そのときに、すごく嬉しかったんですね。それまでは好きなこととかよくわからずにとにかく出していて、動画を出すこと自体は好きだったんですけど、そこで何をしたいかまではわかっていなくて。
でもそのとき、本とか美術館とかを紹介して、みんなから共感をもらったり、他の人の意見をもらったり、あるいは一緒にしゃべれる仲間が増えたりしたのがやっぱ楽しいのかなって思ったんです。いわゆる「伸びるジャンル」ではないけれども、せっかくやりたいこと決まったんだったら、やりたいことやろうと思って。それでもう今はガシッと決めたという感じですね。
「バランスが大事」 文学YouTuberとしての苦労と工夫
―― 文学YouTuberとして活動していて、大変なことはありますか?
どうしても認知の速度が遅いですね。
まず文学YouTuberっていうのがいるということ自体知らないと思うんですよね。例えば美容YouTuberはいるなって思うし、ゲーム実況する人もいるなって思うし、ダンス踊る人もいるなって思うと思うんですけど。でも本を探したいとか、美術について探そうって思ったときに、YouTubeで探せるって思わないですよね。
―― その中で、登録者数や再生回数を伸ばすために、意識していることや工夫していることはありますか?
登録者数という意味では、動画の「タメになった指数」かなと思います。いかにタメになるか、みんなの視野を広げられるのかを意識した動画作りを考えています。
―― 再生回数に関しては何かありますか?
再生回数で言えば、例えば私の場合、「オススメ本ランキング」や「オススメ本何選」、「2018年面白かったランキング」みたいなものが伸びやすいですね。ただやっぱり書評動画って伸びにくいので、本の選び方に関してはトレンドやキャッチーなものなど、伸びやすそうなものに寄せているということはあります。例えばビジネス関連だと堀江貴文さんや落合陽一さんの著書であるとか、映画公開されるものを先に読んでおくとか。
―― 数字の部分はモチベーションになりますか?
そこはバランスですね。数字のほうばっかり見てると、自分のやる意味みたいなところとずれてきてしまうかなとも思うので、やっぱりバランス。キャッチーなものも取り入れながら、流行るかどうかわからないけど好きな本とかも混ぜながら、のバランスが大事かなって思います。
2018年面白おすすめ本ランキング20!1位はまさかの…【書評】
YouTube NextUp 2017入賞での大きな変化
―― 去年「YouTube NextUp 2017」コンテストで入賞されましたね。その前後で何か変化はありましたか?
もう完全にありましたね。読書感想文の動画で自分のやりたいことは発見したのですが、その後も、伸びそうなものをあっちこっちやって迷走してるような状況で、編集技術も全くなくてWindowsのムービーメーカーでずっと作っていて。
―― ムービーメーカーで作っていたんですね。
はい。でもNextUpに入賞して、編集技術や撮影、あとYouTubeとはなんぞやっていうところから、キャンプみたいな環境でいろいろ学んで。「ああYouTuberってこういう世界か」ということを感じたんです。編集などのできることがすごく増えたのも大きかったですし、周りのYouTuberたちもやりたいことがきちんとあって、それに向かってやっているっていう姿に刺激を受けました。
それで、「やっぱりYouTubeやっていきたいな」って思ったんです。そのときまではYouTubeだけでやっていこうとは思っていなかったし、できるとも思っていなかったのですが、NextUpを経て、こういう世界だったらやってみたいなって思ったんです。
―― 大きな心境の変化があったんですね。
それで、そのためにどうしようかと考えたら、やっぱり軸ややりたいことを明確にしないといけないなと思って、NextUpがあったのが夏だったのですが、秋になって文学YouTuberっていうのを名乗って、もう今年に入ってからは完全に固まりましたね。
―― ではここ1年以内でのかなり大きい変化だったんですね。
そうですね。そこからやっとYouTuberらしくなったかなって思います。あとは、いけるんじゃないかっていう自信がついたっていう感じですね。
―― NextUpの賞金の使いみちを教えていただけますか?
4Kのビデオカメラを買いました。あとはNextUpでひとつ自分の作品を作るんですが、そこで使う道具や機材などを購入して終わりましたね(笑)
―― 動画の質にはこだわっているんでしょうか。
そうですね。ちょっと差別化したいというところもありますね。教育系のYouTuberとかだとやっぱりしゃべりが上手なので、そこまで編集しなくてよかったりするんですけど、やっぱり私の場合は元々学ぶつもりで見ていない人にも興味を持ってほしいというのもあるので、他のYouTuberで見慣れている編集のレベルくらいには、編集もきちんとして出そうとは思ってますね。
「今までの人生では出会えなかったような人たちと出会えた」
―― 今まで約3年活動されてきて、YouTuberをやってきてよかったことはどんなことですか?
今までの人生では出会えなかったような人たちと出会えたということ、そして一緒に自分の好きな活動ができるようになったっていうことですね。
ニッチなジャンルの趣味なので、例えば本についてリアルの友達に10分語ったら「何だこいつ」ってなるじゃないですか。でもYouTubeだったら10分それについて語ろうとみんなわかってくれるし、そこがわかり合えるコミュニティーみたいな感じになって、その中にいる人同士がつながれたりっていうことがあるんですよね。
―― そして今はご自身のチャンネル以外にも活躍の場所が広がっていますよね。
そうなんです。今、他のYouTuberと一緒に「#部活ONE!」っていうチャンネルに出てるんですけど、そうやって他のYouTuberと出会えたり、あとは執筆のご依頼があったりという形の出会いもあります。
そうやって、動画を投稿するということによって全部がいろんなところに派生して広がっていって、自分のやりたかったことが実現できる可能性がかなり広がっています。動画はひとりでやっているのに、ひとりではできないことが叶っていくような感覚があって、この登録者数の規模であっても、やっぱり夢はあるなあっていうふうに感じていますね。
―― YouTuberは孤独だみたいな話をされる方もいますけど、それはあまり感じませんか?
どうですかねー、まあそもそも孤独だったので(笑)自分の場合はそんなに感じないですかね。むしろ温かい人たちが、私がやりたいって思ってることについて全力で応援してくれてるのが見えるので、すごい自信につながってますね。
憧れのYouTuberはバイリンガールちかさん
―― 今後のことについてお聞きしていきたいと思うのですが、好きなYouTuberさんとか、コラボしてみたいYouTuberさんっていますか?
もう圧倒的好きなYouTuberさんは、バイリンガールちかさんですね。書評で本も紹介させていただきました。やっぱり憧れですね。英語っていう私と同じ教育系のジャンルですが、私の3年なんか比じゃなくて、それをずっとやって100万人までチャンネル成長させていて。しかもちかさんの「ちか友」っていうコミュニティーの絆が深くて。彼女自身もすごいキラキラしてて、それでいてみんなと一緒にやっていこうっていう感じで活動されていて。旦那さんとの関係も憧れますし。
―― まだお会いしたことはないんですか?
実は、見かけたことだけはあるんです。あるイベントのパーティーがあって、そこで私が出演する側だったんですね。そのときに私バブリーな格好してて。そしたら観客にちかさんがいたんですよ。袖から見て「ちかさんいる!」って思って。ただ、絶対私ってわかってもらえない(笑)バブリーな衣装で「シモシモ」とか言ってたんで。こんな出会いのはずじゃなかったっていう。だからまだ正式な出会いはまだです(笑)
―― もしコラボできたりしたら嬉しいですか?
うううううん!!そうなるためにもうちょっと頑張ります(笑)
作家さんとの対談、美術館ツアー、執筆・・・広がる夢
―― 一緒にお仕事をしてみたい企業さんとかはありますか?
めちゃくちゃあります(笑)
まず作家さんとの対談をやりたいんですよね。作家さんってすごい遠いイメージがあるかもしれないんですが、そういう方に私みたいな人がインタビューをしたりして、もっとその方の作品のことを知ってもらえるような機会を作りたいな、っていうのがありますね。
あとは本に関連するイベントとかあるじゃないですか。サイン会とか。そういうイベントにMCで登場してみたいなって思います。そういったコラボなどで、少しでも本に興味のある人が来てもらえるようなカジュアルなイベントをやってみたいです。こういうものは出版社さんとも協力する必要がありますが、ひとりじゃできない面白いことを広げていきたいなと思いますね。
―― そういうのはベルさんとぴったりですね。本関連以外では何かありますか?
美術館のレビューもしてるので、美術館の音声ガイドとか、美術館ツアーとかしてみたいです。
あとは自分も執筆したいですね。ウェブメディアでの連載とか。やっぱり書けるYouTuberってなかなかいないと思いますし。そしてゆくゆくは出版ということで(笑)
―― 自分で書くのも好きなんですね。
書くの好きですね。どっちかっていうと書いてたい感じがありますね。YouTuberとしてやっている作業の中で、本を読む以外だと、台本書いて、撮影して、編集して、っていう3つの工程があるのですが、その中で一番好きなのは台本書くことなんですよね。文章を書いてて、「決まった!」って感じるときは自分の中で好きなんです。もちろん今はYouTube伸ばしていきたいと思っていますが、書くこととの両輪で伸ばしていきたいって思います。
―― コラボでいうと、本屋さんで「ベルさんオススメ」みたいなのもありそうですね。
やりたいですね!最初はビレバンとか(笑)よくYouTuberとコラボするじゃないですかビレバンって。だから私が本命本命って(笑)あとは最近増えてる体験型のブックカフェとかで、一日店長とかしてみたいです。
「みんなの夢を叶えられるようなコミュニティに」
―― 今後の目標ややりたいこと、展望などを教えていただけますか?
まずは、先ほど言ったコラボとかでどんどんどんどん活動を広げていきたいと思っています。
あとはそれをする中で、自分のコミュニティーをどんどん活性化させたいって思っています。今度オフ会を開催することがほぼ決まりそうなのですが、そういうところでリアルに、視聴者さん同士での交流、横のつながりを増やしていきたいって思うんです。
動画の中だと今も、「未来のスター作家発掘大作戦」みたいなのをやっていて、視聴者さんの中で執筆活動をされてる人に作品を投稿してもらって、それを私が朗読して、視聴者さんたち私でレビューをして、というのをしているんですけど、私のチャンネルで、私の夢だけじゃなくて、みんなの夢を叶えられるようなコミュニティになったらなあって思いますね。
―― 登録者数の目標はあったりするんですか?
今年の始めの抱負で、5万人って言いました。数字で言ったほうがわかりやすいかなと思って。今も5万人を目標にしています。
―― そういう数字の目標も追いつつ、やりたいことに向かっていくという感じなんですね。
やっぱり数字があることによって、やりたいこと、例えば企業さんとのコラボのようなひとりじゃできないことに、誰かが協力してくれるようになるっていうのはあると思います。なのでそこはコツコツではありますけど、増やしていきたいっていうのはもちろんありますね。
「苦じゃないことで生きていく」
―― ベルさん自身、最初YouTubeに投稿し始めたとき、別にジャンルもやりたいことも決まってたわけではなくて、活動していく中で、やりたいことが明確になっていったと思うんですけど、それって結構いろんな人に通じることなのかなと思います。
「やりたいことがない」という悩みを抱えている人には、どんなことを伝えたいですか?
「苦じゃないことで生きていく」だと思っていて、私は。
「苦じゃないこと」だったらなんとなくわかる気がするんです。例えば私のYouTubeの場合だったら、台本、撮影、編集の中だと台本が一番苦じゃないなと思うというように。あと本を読むことも、波はあるけど、なんかずっと続いてるなとか。あとなんかわからないけどYouTubeはずっと見てるなとか。そういう苦じゃないことの組み合わせで、大きく言ったら職業とか、自分にとっての何かを見つけられるのかなって思いますね。
私の場合は、例えば毎日コスメを紹介するとか、毎日ゲームをひたすらやるってなると、やっぱり苦になるイメージがあって、けど本を紹介するのは苦じゃないんです。また変なの選んだなと自分でも思うんですけど、でも私にとっては苦じゃないし、美術館レビューするのもピアノも苦じゃない。
何を選んでも絶対大変なことには変わりないと思うので、その中で、まあやってもいいんじゃないかなくらいのやつを選ぶ。「好きなことで生きていく」っていったらなんかね、胡散臭くなるっていうか、好きなことって何?みたいな。別に無趣味だし、みたいなね(笑)
―― 「やりたいことが見つからない」っていう人にはすごくヒントになりそうです。
YouTubeだとそんな真面目くさった話ばっかりできないと思うんですけど、執筆とかだったらできるかなと思っていて、そういう活動も今後バランスよくやっていけたらなあって思いますね。
視聴者さんへの「圧倒的感謝」
―― 最後に、動画を見てくださってる方に、伝えたいことはどんなことですか?
圧倒的感謝です!私は事務所に所属せず、無所属でやってるんですよね。その中で私が活動できている一番の支えは視聴者さんなんです。さっき孤独じゃなくてむしろつながりが増えているって言ったのは、本当に視聴者さんのおかげだと思ってます。コメントとかもすごい長文で自分の意見を書いてくれたり、みんなでお互い褒め合ったり、ちょっとYouTubeのイメージが変わるような場を作れているのも、本当に視聴者さんのおかげなんです。
いつもだいたい私はあっちゃこっちゃ結構やっちゃうタイプで、「これやるぞ!」「新しいことやるぞ!」みたいな感じなので、ほんと視聴者さんは振り回されてくださってるので(笑)ずっと見守ってくれてありがたいなと思います。
あと新しい視聴者さんには、私の動画は本っていう軸ではあるんですけど、教育的な面っていうのもあるかなと思っていて、悩んでる学生さんとかにも見てほしいなって思ってるんですよね。生配信でも悩み相談とかやるんですけど、そういうところで大人たちが真剣にアドバイスくれたりということがあるので、ちょっと覗いてほしいなって思いますね。
せっかく見てくださってるので、動画と活動でお返しできるように頑張りたいと思います。
文学YouTuberとして活躍の幅を広げていくベルさん。今後も彼女の活躍から目が離せません。
ちなみに好きな食べものは梅干しとのこと。
ベルさんはとても親しみやすくインタビューも楽しく進められました。
ベルりんの壁のベルさん、ありがとうございました!
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