ゲーム実況動画を作る前に覚えておきたい「著作権」のこと
目次
YouTubeでも人気のゲーム実況動画。ところが、ゲーム実況動画を巡って著作権に関する問題も多発しています。ここでは、ゲーム実況動画を作成・投稿する前に知っておきたい著作権に関する知識や、著作権法違反にならないためのポイントをご紹介します。
ゲームと著作権の関係とは
ゲーム実況動画を投稿すると著作権法に違反するのか、気になる方も多いのではないでしょうか。ゲーム実況動画を含め、ゲームと著作権の関係と現状を見てみましょう。
ゲームは著作物の分類では「映画」にあたる
ゲームにも著作権はあるのでしょうか。答えはイエス。ゲームにもしっかり著作権があります。
「公益社団法人著作権情報センターCRIC」のページでは、著作権を以下のように定義しています。
文化的な創作物とは、文芸、学術、美術、音楽などのジャンルに入り、人間の思想、感情を創作的に表現したもののことで、著作物といいます。また、それを創作した人が著作者です。
著作権は、権利を得るための手続きを何ら必要としません。著作物を創作した時点で自動的に権利が発生(無方式主義)し、以後、原則として著作者の死後50年まで保護されます。
ゲームは著作物のカテゴリではビデオソフト、ゲームソフトなどとして「映画の著作物」の一部に該当します。
ゲーム実況動画は「公衆送信権の侵害」に該当
ゲーム自体は「映画の著作物」に該当しますが、ゲームはストーリーやキャラクター、プログラムと多岐にわたる著作物の要素を持っています。そのため、ゲームに対してどのような行為を行ったかによって、該当する著作権法が異なってきます。
例えば、ゲームのキャラクターを無断で使用した場合は「美術の著作物」違反になり、ゲームのプログラムを無断で転用した場合には「プログラムの著作物」違反となります。これに則るとゲーム実況動画を無断で流した場合には、映画を無断で録画して勝手に流す「公衆送信権の侵害」に該当し、著作権法違反となります。
ゲーム実況動画の著作権はとても曖昧だった
ところが、ゲーム実況動画に関する著作権の考え方はとても曖昧でした。ゲーム実況は映画の著作物に該当しますが、そもそもゲームを操作するユーザーがいなければゲームそのものが成立しないためです。さらに、ゲームの結果や楽しみ方、成果もユーザーの操作方法によって異なってきます。つまり、ユーザーが操作しているゲーム実況動画は、ユーザーの著作物にあたる、という考え方もできるのです。
近年ではYouTubeを始めとした動画サイトが多く誕生したのを受け、ゲーム実況動画も多く作成・投稿されるようになりました。これに伴い、ゲーム実況動画の著作権に対する現状も近年変化してきました。
現状から見るゲーム実況動画に対する著作権の考え方
ゲーム実況動画の増加を受けて変化してきた、ゲーム実況動画に対する著作権の考え方は、現状ではどうなっているかを見てみましょう。
ゲームに関する著作権法違反の判例はある
ゲームそのものに対する著作権法違反の裁判、及び判例は多々ありました。以下は「日本ユニ著作権センター」からのゲームに関する判例のうちのひとつです。
平成13年2月13日判決
「ときめきメモリアル」無断改変事件B
東京地裁/提訴
ソフト制作者コナミは、人気ゲームソフト「ときめきメモリアル」の主役キャラクターを無断でアダルトビデオに使用され、著作権侵害とキャラクターの清純なイメージが損なわれたとして、ビデオを制作した男性を相手取り、販売差し止めと1000万円余の損害賠償を求める訴訟を起こした。訴えによると、この男性はゲームの人気キャラクター「藤崎詩織」とそっくりな人物を登場させたアダルトアニメを作成。昨年1月ごろからビデオ市販店に持ち込み、少なくとも900本も販売していたという。
ゲームに関する裁判は、いずれもゲーム機の改変やキャラクターの無断使用に関するものが多くなっています。
「ゲーム実況」そのものをマーケティングに
一方で、ゲーム実況動画がYouTubeなどにアップされ、多く再生されるとそれだけで大きなマーケティング効果も得られます。さらに、動画の作成やプロモーションはユーザー自身に委ねられるため、ゲーム会社側としてはマーケティングの手間やコストも抑えられるメリットもあります。
この流れを受けて、ゲーム実況動画をマーケティングに利用しようとするゲーム会社も多く誕生しました。ゲーム会社によっては、一定の条件を満たせばゲーム実況動画を公認で作成・配信できるようになりました。もちろん、ゲーム会社公認のため、著作権法違反にはなりません。
ゲーム実況動画で著作権法違反にならない3つの方法
公認するゲーム会社が増えてきた一方でも、ゲーム実況動画を無断で流すことは著作権法違反に該当することを忘れてはいけません。ゲーム実況動画を配信する前に覚えておきたい、著作権法違反にならない3つの方法を紹介します。
ゲーム実況動画配信を認めている会社を選び、条件を満たす
ゲーム実況動画の配信を認めている会社のゲームの実況なら、当然著作権法違反にはなりません。ただし、ゲーム実況動画配信についてゲーム会社側が条件を提示していますので、必ず条件を満たした上でゲーム実況動画を作成・配信しましょう。
例:
- Nintendo
「Nintendo Creators Program」に加入の上、同社の認めている「利用可能タイトルリスト」のゲームならゲーム実況動画作成と配信が可能。
Nintendo Creators Program利用可能タイトルリスト - Sony
プレイステーション4にはプレイ中の動画の録画、及びYouTubeなどに配信できる「シェア機能」が搭載されている。シェア機能が使用できる範囲での動画作成や配信は著作権法違反にはならない。ただし、シェア機能が使えないゲーム内の「録画禁止区域」の動画をほかのツールで撮影して配信したり、シェア機能で作成した動画を収益のために配信したりするのは禁止、著作権法違反となる。
ゲーム会社の著作権に対する考えを把握しておく
公式サイトなどでゲーム実況動画を含めた、著作権に対する考えを明示しているゲーム会社も多くなりました。例えば、「株式会社アトラス」では「アトラス公式サイト著作物利用規約」を明示しています。
アトラス公式サイト著作物利用規約
著作権に対する考え方は「私的利用ならOK」「ゲームなど出典元を記載すればOK」「全てNG」など、ゲーム会社個々によって異なります。実況したいゲームタイトルのゲーム会社の著作権に対する考え方や条件を確認し、その範囲内でゲーム実況動画を配信すれば、著作権法違反とはなりません。
情報収集を欠かさない
ゲーム実況を含めて、著作権に対するゲーム会社の考えや対応は都度変化することがあります。よって、常にゲームは著作物であることを意識し、ネットを始め情報収集を欠かさないようにしましょう。動画マーケティングサービス「kamui tracker」の発信する情報メディア「かむなび」でも、ゲーム実況をはじめ、YouTubeや動画作成に関する最新情報をお届けしてまいりますので、是非ご活用ください。
著作権を意識しながら、ゲーム実況動画を楽しもう
ゲーム実況動画配信に対する著作権問題についてご紹介しました。ここでポイントをまとめておきます。
- ゲームにも著作権があり、著作権分類でいうと「映画の著作物」に該当する。ただし、美術やプログラムなど複合的な著作物のため、行った行為によって該当する著作権法が異なる。
- ゲーム実況動画は、企業側にとってマーケティング効果が得られるメリットもあるため、条件下においてゲーム実況動画を認めるゲーム会社も増加してきた。
- ゲーム実況動画を作成・配信する際には、ゲーム会社ごとに異なる条件や考え方を把握し、その範囲内で行っていくことが大切である。
ゲームはゲーム会社の著作物であるという意識を忘れず、ルールを守ってゲーム実況を楽しんでいきましょう。