次世代オウンドメディアとしてのYouTube活用とその可能性について【ガイアックス社・GROVE社インタビュー】
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「オウンドメディア」というと自社でメディアを運営し、Google等の検索エンジンからターゲット層にアプローチする手法というイメージが強い。しかし、YouTuberとソーシャルメディアのプロから見れば、YouTubeをプラットフォームとしたオウンドメディア運営が、これからアツくなっていくらしい。YouTuberタイアップやTrueView広告だけではない、自社チャンネルを持つというYouTube活用の可能性について、ガイアックス社の大久保氏(写真:右)・GROVE社の幸野氏(写真:左)に伺った。
企画・制作/EVIRY, INC
WEB動画の格納庫ではもったいない!自社YouTubeアカウント運用の可能性
―― 最初に、自己紹介と会社の紹介をお願いします。
大久保:ガイアックスのソーシャルメディアマーケティング事業部の大久保と申します。SNSのアカウントの運用や、ソーシャルメディアを起点としたマーケティング施策全体のコンサルティングをしています。
YouTubeがコンテンツマーケティングのプラットフォームとして活用しやすくなり、オウンドメディアとしてYouTubeを使いたいというニーズが増え始め、本格的に支援を始めました。
幸野:GROVE取締役の幸野と申します。YouTubeをはじめ、SNSで活躍するインフルエンサーを100名ほど抱えるプロダクションです。グループ会社の母体がテレビの制作会社であり、制作面にも強みがあります。インフルエンサープロダクション・広告代理店・制作会社の3つの側面を持ち、企画はもちろんキャスティングから制作までワンストップで行うことが可能です。
自社YouTubeチャンネルの運用を検討中の企業様からあるご相談の中で、チャンネルコンセプトの企画に工数がかかり、運用に手が回らなというご意見が多々ありました。
自社の知見を活かし、自社チャンネルの運営に関しても、コンテンツ制作の観点からご支援をさせていただいています。
―― コンテンツマーケティング全般の動向について伺えますか?
大久保:「コンテンツマーケティング」や「オウンドメディア 」がGoogleのトレンドで上昇し始めたのが5年前。本来コンテンツマーケティングの”コンテンツ”は記事・動画・冊子など色々なものが含まれますし、コンテンツの届け方も様々なのですが、これらの言葉はSEOの文脈で語れていることが多いと感じています。つまりコンテンツマーケティングを行うプラットフォームの前提がGoogleだったんですよね。
そのため最初の頃は、検索流入を意識したSEO重視のコンテンツが多く見られました。しかし、徐々にSEOだけを意識したコンテンツはどの企業も同じになってしまい、ユーザーに見てもらえないようになってきました。ユーザーが知りたい情報であることはもちろん、記事やコンテンツ自体の面白さ、役に立つ内容であるといったような、「質」重視のコンテンツマーケティングを求められているというのが現状です。
―― 現在のYouTubeを企業はどのような場として考えるべきでしょうか?
大久保:YouTubeはかつて「音楽を聴く場所」のように思われていましたが、今は自分の欲しい商品を見つける場であり、気になった商品を検索できる場に進化しています。若年層はもちろんですが、その他の年代でも利用率は8割を超えているので、今後企業が押さえておかなくてはならないプラットフォームとなっていくでしょう。
実際にCA Young Labさんの調査では、10代の6割が「商品購入を検討する際にYouTuberの動画を参考にする」と答えています。
一方でサイバー・バズさんのデータでは、30代女性の約40%が、気になった商品・サービスをYouTubeで検索したことがあるという結果が出ました。このように、YouTubeは商品やサービスを検索し、購入を検討するプラットフォームに変わってきたことがわかります。
→CA Young Labさんの調査はこちらから
→サイバー・バズさんの調査はこちらから
―― そういった中で、YouTubeを使ったコンテンツマーケティングはどういった現状にあるのでしょうか?
大久保:多くの企業のYouTubeアカウントは、「CM動画の格納庫」として使用され、実質活用できていないケースがほとんどといえます。実際「YouTubeでのプロモーション」といえば、YouTuberを起用したタイアッププロモーションか、TrueView広告をイメージする方が多いのではないでしょうか。
―― 企業がコンテンツマーケティングの場としてYouTubeを選ぶ場合、どのような課題があるのでしょうか?
幸野:チャンネルのコンセプトを作るところからつまずくケースが多いようです。YouTubeをどんな目的で、どう活用していくのか。その目的に対してどういう企画・コンテンツを作っていくのかをきちんと決定しなければいけませんが、現状はそこまで手が回らないという企業が多いです。
「エンタメ要素」が見られるポイント
―― YouTubeはどのような年代層に見られていますか?
幸野:一番は見ているのは感度が高い若年層や女性だと思います。特に化粧品やファッションなど実際の使用感がわかる動画を視聴し、購入する方が増えてきています。
また男性はガジェット系のレビューをよく視聴している印象です。紹介動画では細かく使用感を説明しているため、プロダクト・ガジェット系の相性はとても良いです。
10代になるとレビュー動画以上にYouTuberの存在が圧倒的です。その人のファンが紹介してくれるものが影響力が非常に大きく、芸能人やタレントを凌ぐほどです。
―― そういった中で企業が活用している現状を見て感じることはありますか?
幸野:商品を買うというユーザー体験にエンタメ性が必要だということですね。今の消費者は、購入すること自体をひとつの楽しみとして捉えている傾向があります。動画やYouTuberを使ったコンテンツマーケティングであればそれが可能になります。
―― 確かに、記事主体のメディアだと難しい部分がありますよね。
大久保:記事が主体のメディアだと、そもそも伝えれられる情報量が少ないですし、企業としてそもそもエンタメ性の高いコンテンツに踏み込みにくい背景があります。
エンタメコンテンツは検索エンジン流入ではなくソーシャル流入メインとなるのですが、毎回ソーシャルでバズるコンテンツを作ることは難しく、再現性が低い施策となってしまいます。一方、検索エンジン流入目的のコンテンツは検索ボリュームなどから一定の流入予測が立てられ、再現性も高いのです。そのため企業としては課題解決系のコンテンツに投資しがちになるという背景があります。
―― YouTubeでは、なぜエンタメ要素を入れたほうが見られやすくなるのですか?
大久保:それは、YouTubeでは動画視聴の約8割が、関連動画など、YouTubeがレコメンドした動画経由で起きていることが多いからです。検索経由の視聴は20%程度です。
つまりコンテンツ視聴態度が”能動的”ではなく”半受動的”な状態なので、レコメンドで表示された際に、「面白そう」と思ってもらえないと、同じくレコメンドで表示された他の動画に負け「見られないコンテンツ」になってしまうのです。
また、エンタメ要素を動画に組み込めば動画からの離脱も防ぐことができ、次の動画の視聴にもつながりやすくなります。
企業チャンネルの成功事例とその共通点
―― YouTubeの企業アカウントは、現状ではうまく活用されていないというお話がありましたが、その中でうまく活用している事例はあるのでしょうか?
大久保:はい、あります。
耳掃除サロンと歯医者のチャンネルを実例にあげます。
紹介した2チャンネルで投稿された歯石取りや耳掃除はYouTubeで人気のコンテンツです。サロンの宣伝ではなく、YouTubeで見られそうなコンテンツを提供し楽しんだ視聴者が「あ、こういうお店があるんだ」と興味を持ってもらえる。まさに潜在顧客に向けてアプローチしている上手い例です。
■耳そうじサロン eariss【イアリス】
■ザ・ホワイトデンタルクリニック
大久保:歯医者さんのチャンネルでは、サムネイルも工夫や無料カウンセリングの情報も流し、潜在顧客のリフトアップする導線も作っていますそしてチャンネル登録者は2万人もいるんです。こういう動画コンテンツは一度作ってしまえばSNSやHPにも応用することができるので一石二鳥、三鳥にもなり得ます。
■葬儀葬式ch有限会社佐藤葬祭
大久保:このチャンネルは葬儀屋オーナーがライブ配信でユーザーの質問に答えていくスタイルが大きな特徴です。動画で受け答えや所作で細かい部分まで見えるため、HPや記事の文章だけでは見えにくい誠実性がダイレクトに伝わります。
日常生活と馴染みがない冠婚葬祭だからこそ、YouTubeのチャンネル運営を通じ、視聴者と信頼関係を築くことが後に顧客の獲得に良い影響をもたらします。
―― 人が見えるというのが動画の強みなのですね。この先伸びそうなのはどんな業種ですか?
大久保:どの業種でも可能だと考えていますが、すでにYouTubeに多くの動画がある業界は特に相性が良いでしょう。例えば、ゲーム、アプリ、コスメなどのジャンルは、YouTube上でも人気のコンテンツで、YouTuberとのタイアップ動画も多くあがっています。こういったジャンルは既存の動画からの関連動画にも入りやすいので、伸びやすいといえます。
―― 他に相性の良さそうな商品などはありますか?
幸野:身体的、経済的にハードルが高い商品や、不安感を抱きやすい商品も、情報量の多い動画を通じて懸念を払拭できるため、とても相性が良いです。
具体例をあげれば、脱毛・美容整形の企業や体験者がYouTubeを活用しているケースが増えています。VAZに所属している「轟ちゃん」というYouTuberは美容整形をしていることを公表しているYouTuberで整形に関する動画も投稿しています。
こういったものはなかなか文章や写真だけでは伝わりきらないので、YouTubeの活用が有効といえます。
―― YouTuberとのタイアップに関しては、相性が悪い商品も一部あるとされていますが、その場合でもオウンドメディアを活用は有効でしょうか?
大久保:例えば、マッチングアプリなどは、事務所によってはタイアップがNGという場合もあります。そのような場合に、YouTube上のオウンドメディアでプロモーションを行なうということがひとつの解決策となります。
視聴者にしっかり届き、ファンが生まれるようなコンテンツを
―― 番組制作会社を母体に持つGROVE社から見ると、YouTubeとテレビの違いは何だと思われますか?
幸野:YouTubeは動画の尺が短く、なるべく3〜5分以内で収める必要があります。テレビの構成は、視聴者の時間をある程度拘束した中で起承転結を作りますが、YouTubeは見せ場をある程度最初のほうに持っていかないとユーザーの離脱が起きてしまいます。
他にはYouTuberとファンの距離が圧倒的に近い点が挙げられます。インフルエンサーはユーザーとのコミュニケーションに慣れていているため、プロモーションにおいても、より近い距離でメッセージを伝えることができます。
―― 企業におけるコンテンツマーケティングとしての、YouTube活用の成功の秘訣は何でしょう?
大久保:企業が発信したいコンテンツではなく、ユーザーがきちんとコンテンツとして消費できるものを作ることが大事です。やはり見られなければどうしようもない。届け方もセットで考えることがコンテンツ制作の段階で重要だと思います。
幸野:投稿をゴールにせず、届かせること、視聴してもらうことが非常に大事です。そのためにも日頃からユーザーとコメントなどを通じてコミュニケーションを取り、その中で得られるフィードバックも活かしながらブラッシュアップしていくことが重要です。
―― 企業のYouTube活用を両社がサポートするうえで、特に意識していることは何ですか?
大久保:基本的には、今までのWEBやSNSがYouTubeにシフトしただけだと考えています。全体の戦略を考え、どういうユーザーにリーチし、リフトアップをさせていくのかを設計します。また、特にチャンネル初期の集客設計には力を入れています。初期にユーザーが集まらないと、「なんでやってるんでしたっけ」とか「やっぱり集客難しいですね」で終わってしまいますので。
幸野:動画制作においても同様です。そもそもの目的をすり合わせないと動画の企画がズレてしまうので、打ち合わせをしっかり行い、キャスティングや制作に反映させます。
もうひとつは、視聴者に楽しんでもらえて、ファンが生まれていくようなコンテンツを制作するように意識しています。チャンネル登録ボタンを押してもらうには、「継続的に見たい」と思われることが重要なので、その仕組み作りは欠かせません。
―― GROVE社はインフルエンサープロダクションでもありますが、その部分も強みとして活かされているのでしょうか。
幸野:はい。インフルエンサープロダクションであることを活かして、企業チャンネルの動画制作をする際に、YouTuberやインフルエンサーをキャスティングし出演してもらうこともできます。それによって動画が拡散されやすくなるので、「投稿しても視聴者に届かない」という課題を解決することができます。
YouTube活用がマストとなる時代が到来
―― 今後のYouTubeを活用したコンテンツマーケティングの展望を教えてください。
大久保:YouTube上に多種多様なコンテンツが増えていくと、YouTubeで動画を見たり、YouTubeで検索をするユーザーも増えていきます。
そうなるとYouTubeは企業にとっても、ますます対応しなくてはならないプラットフォームとなっていきます。
Googleの検索結果の上位にYouTubeの動画が表示されることも増えてきました。
コンテンツマーケティングを考える企業であれば、YouTubeはマストの存在になっていくと思います。
幸野:5Gの導入によって、広告やプロモーションでますます動画が活用されていくでしょう。そのような環境が整備されていくに伴い、オウンドメディアとしてYouTubeでチャンネル運営を行う企業は増えていくはずです。
その中で差別化するためにも、伝え方が大事になっていきます。その点は僕らのような映像制作のプロの会社に任せることも有効です。
TrueView広告とYouTuberタイアップはあくまでスポットの施策です。
その点自社のチャンネルは資産として蓄積されていく施策なので、継続するほど1再生あたりの単価も下がっていきます。
―― 最後に、YouTubeの活用を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。
大久保:企業の公式チャンネル活用事例が少ないこともあり、なかなか一歩を踏み出せない企業が多いと思うので、弊社がサポートして成功事例を作り、市場を広げていきたいと思っています。
幸野:YouTubeを使ったオウンドメディアは、今始めるのがベストタイミングです。記事主体のメディアはすでに競合が多いですが、YouTubeなら今はまだ先行者メリットを享受できます。事例が少ない今こそ、YouTubeの活用にチャレンジしてほしいと思います。
▶株式会社ガイアックス
YouTubeチャンネルを活用したコンテンツマーケティングのご相談は
こちらまでご連絡ください。
メールアドレス:ryosuke.okubo@gaiax.com
▶GROVE株式会社
YouTuberやインフルエンサーのキャスティングやプロモーション、
YouTubeを活用した動画マーケティングのご依頼はこちらまでご連絡ください。
メールアドレス:info@grove.tokyo